今回は実際に Ubuntu 12.04 LTS のインストールを行います。
今回は 64bit の Ubuntu 12.04 LTS を用います。また,インストールを行う PC は仮想マシンを用いました。仮想マシンの構成は以下のとおりです。
- CPU : 2CPU 2.67GHz
- メモリ : 2GB
- HDD : 20G
- ビデオメモリ : 32MB
また,サーバとして運用する場合,ストレージの容量が足りなくなった際に,物理的なドライブを用いたストレージ管理では簡単には容量を追加できないため,容易にストレージの追加,容量の拡大ができるように,論理ボリュームマネージャ (LVM : Logical Volume Manager)を用いて,Ubuntu を構成したいと思います。
LVM の仕組みを簡単に説明すると,OS における物理的なマウントポイントのような物理ボリューム (PV : Physical Volume)と,ハードディスクドライブに相当する,物理ボリュームをグループ化したボリュームグループ (VG : Volume Group),一般的なパーティションに相当する,ボリュームグループを切り分けた論理ボリューム (LV : Logical Volume)で構成されます。
また,LV はブロック単位で数えられ,その単位を PE (Physical Extent)といいます。1つの LV で使用出来る PE の数は決まっており,そのため,PE のサイズによって,LV の容量の限界が決められます。標準の PE は 4MB ですが,これだと,LV のサイズが 256GB 程度に限定されるため,私の環境では PE を 32MB としています。これで 2TB 程度 の LV を扱うことができます。
Ubuntu では標準的なインストールでは,LVM では構成されないため,Live CD 環境でLVM を構成したあと,インストールを進める必要があります。
*Ubuntu 12.10 からインストール時に LVM を構成できるようになりました。
Ubuntu 12.04 LTS インストール手順
1.インストールしたい PC に Ubuntu 12.04 LTS の DVD を挿入し,DVD からブートさせます。
2.キーボードと人の画面が出てきたら,すぐに何かキーを押す。
3.下図のような言語選択画面が表示されるので,日本語を選択。
4.「インストールせずに Ubuntu を試してみる」を選択。
5.デスクトップ画面が表示されたら,画面左上のダッシュホームをクリックし,検索窓に terminal と入力し,「Terminal 」を起動。
6.Terminal が起動したら,下記のコマンドを実行し,LVMを管理する lvm2 というソフトウェアをインストールする。
#管理者権限になります。 sudo su #パッケージリストを更新します。 apt-get update #*ここで apt-get upgrade は行わないでください。 #LVMソフトウェアをインストール apt-get install lvm2 #続行するかどうか聞かれたら「y」を入力。
7.次に,ブート用のパーティションと LVM 用のパーティションを切ります。私の環境では,ハードディスクは1つで,シングルブート環境で他に OS がないので,1つのハードディスク全体を用います。また,ブート用のパーティションを /dev/sda1,LVM 用のパーティションを /dev/sda2 とします。パーティションのサイズはブート用が 200MB,LVM 用がブート用パーティションを除いた残り全てです。私の環境の場合,インストールするハードディスクは /dev/sda で表されます。複数ハードディスクを用いる場合,複数の OS を1つのハードディスクにインストールしたい等,パーティションが既にある場合は,適宜置き換えてください。
#認識しているディスクの一覧を確認 fdisk -l #インストールするハードディスクのパーティションを編集します。 fdisk /dev/sda #以下は fdisk 内でのコマンド(Command (m for help): と出るのでそこで入力) #エンターキーはdefaultの設定が適用されます。 #現在のパーティションテーブルを表示 p #boot用のパーティションを新しく作成 n #Partition typeを選択するのでプライマリーパーティション(基本パーティション)を作成 p #パーティション番号を入力 1 #ファーストセクター(セクターの始まり)はデフォルトのままなので, #エンターキーを入力。ここでは 2048 がファーストセクターだったので,2048を入力 #ラストセクター(セクターの始まり)かサイズを入力。ここでは,200MBなので +200Mと入力 +200M #パーティションが正常に作成されたか確認。 p #LVM用のパーティションを作成 n #Partition typeを選択するのでプライマリーパーティション(基本パーティション)を作成 p #ファーストセクター(セクターの始まり)はデフォルトのままなので,エンターキーを入力。 #ラストセクター(セクターの始まり)はデフォルトのままなので,エンターキーを入力 #パーティションが正常に作成されたか確認。 p #パーティションの種類を LVM に変更する t #パーティション番号を入力。ここでは2。 2 #Hex code を入力。Linux LVM は8eなので,8eを入力 8e #パーティションが正常に作成されたか確認。 p #変更を書き込んで,fdisk を終了 w
8.続いて LVM を構成していきます。私の環境では,VG の名前を Ubuntu_server,LV はルート用の領域(OSのシステム部)とスワップ用の領域を作成し,それぞれの名前を lv_root,lv_swap としています。また,それぞれサイズは 18GB,2GBとしています。
#PV(Physical Volume)作成 #PVの一覧の確認 pvdisplay #PVの作成(LVM 用のパーティションは,ここでは /dev/sda2 です。) pvcreate /dev/sda2 #PVが正常に作成されたか確認 pvdisplay #VG(Volume Group)作成 #VGの一覧の確認 vgdisplay #VGの作成(-s で指定するのが PE のサイズ。次に指定するのが VG の名前と使用する PV の名前) vgcreate -s 32m Ubuntu_server /dev/sda2 #VGが正常に作成されたか確認 vgdisplay #LV(Logical Volume)作成 #LVの一覧の確認 lvdisplay #root用のLVの作成(-L で領域のサイズを指定。-n で LV の名前を指定。最後に LV を作成する VG の指定。) lvcreate -L 18G -n lv_root Ubuntu_server #swap用のLVの作成(-l で領域の割合を指定。-n で LV の名前を指定。最後に LV を作成する VG の指定。) lvcreate -l 100%FREE -n lv_swap Ubuntu_server #lvが正常に作成されたか確認 lvdisplay
9.次に,作成した LV のフォーマットを行います。ここでは,root 用の LV 領域を ext4 でフォーマットし,swap 用の LV 領域を swap 領域化します。
#root 用 LV 領域のフォーマット (/dev/VGの名前/LVの名前 を指定します。) mkfs -t ext4 -L root /dev/Ubuntu_server/lv_root #swap 用 LV 領域の swap 領域化 (/dev/VGの名前/LVの名前 を指定します。) mkswap -L swap /dev/Ubuntu_server/lv_swap
10.これで,LVM で構成されたパーティションが作成できました。続いて実際のインストールを行います。デスクトップ上の「Ubuntu 12.04.2LTS のインストール」を起動。
11.インストーラが起動したら,言語として日本語を選択し,「続ける」をクリック。
12.「インストール中にアップデートをダウンロードする」と「サードパーティのソフトウェアをインストールする」のチェックボックスにチェックし,「続ける」をクリック。
13.今回は LVM で構成しているので,「それ以外」を選択し,「続ける」をクリック。
14.OS やブートローダをインストールするパーティションを決めます。ここでは,lv_root をルート領域とするので,/dev/mapper/Ubuntu_server-lv_root を選択し,「変更」をクリック。
15.「利用方法」をext4ジャーナリングファイルシステムとし,「マウントポイント」は / を選択し,「OK」をクリック。
16.次にブートローダをインストールするパーティションを決めます。ここでは,/dev/sda1 をブートローダ用のパーティションにしていたので, /dev/sda1 を選択し,「変更」をクリック。
17.「利用方法」をext4ジャーナリングファイルシステムとし,「パーティションの初期化」にチェック,「マウントポイント」は /boot を選択し,「OK」をクリック。
18.ここでは,1つのハードディスクを利用し,他の OS はインストールしないので,ブートローダをインストールするデバイスは /dev/sda を選択します。複数の ハードディスクや,OS をインストールする場合は,適宜自分の環境に合わせてください。「インストール」をクリック。
19.ここで,下図のようなエラーが出る場合がありますが,一度フォーマットしているので,無視してかまいません。
20.次の画面では,自分がいる場所を入力。ここでは,Tokyoを選択。「続ける」をクリック。
21.次の画面では,自分のキーボードレイアウトを選択してください。ここでは「日本語」を選択。「続ける」をクリック。
22.次の画面では,最初に登録されるユーザ情報を入力します。各自の環境に合わせてください。「続ける」をクリック。
23.あとは,インストールが終わるのを待ちます。
24.インストールが完了すると,今すぐ再起動するかどうか聞かれますが,必ず再起動せず,「試用を続ける」をクリック。ここで,再起動してしまうと,起動しなくなります。
25.再び,ダッシュホームから「Terminal」を起動し,下記コマンドを実行します。Ubuntu では,標準では LVM を認識しないため,LV 領域にインストールしたルート領域を識別できません。そのため,先ほど,システムをインストールしたルート領域(ここでは,lv_root)に LVM 管理ソフトウェアである lvm2 をインストールする必要があります。
#管理者権限になります。 sudo su #システムをインストールしたルート領域をマウント mount -t ext4 /dev/Ubuntu_server/lv_root /target #ブートローダをインストールしたブート領域をマウント mount -t ext4 /dev/sda1 /target/boot #現在のシステムのルートをシステムをインストールしたルート領域のルートに変更。 #(新しくインストールした Ubuntu にログインすることに相当) chroot /target #パッケージリストをアップデート #*絶対に apt-get upgrade はしないでください。 apt-get update #lvm2 をインストールする。 apt-get install lvm2 #終了する exit exit exit
25.以上で Ubuntu のインストールが終了しました。再起動してください。
お疲れ様でした。
ちなみに,LVM で構成した後に再起動した場合,Ubuntu のインストールが終わってすぐ,再起動し,起動できなくなった場合は,以下の手順を行なってください。
LVM で構成して,起動しなくなった場合の手順
1.Live DVD 環境で起動後,「Terminal」を起動。
2.下記コマンドを実行し,LVM を認識させる。
#管理者権限になる。 sudo su #パッケージリストを更新 apt-get update #lvm2 をインストール apt-get install lvm2 #LVM を認識させる modprobe dm_mod pvscan vgchange -ay
3.これで LVM が認識されたので,それぞれ再起動してしまったタイミングから,作業をやり直してください。